講師: 張 明栄 博士(国立研究開発法人 量⼦科学技術研究開発機構(QST)量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部 部長)
日時:2025年11月17日(月)16:30~
場所:先端量子ビーム科学研究センター分子イメージング棟2F 講義室 + zoom. によるハイブリッド開催
題目:セラノスティクスを志向した放射性診断薬・治療薬の開発の現状と展望について
概要:
放射性薬剤は、種々の疾患の診断と治療を目的として、放射性核種を標的病変に局所的に送達する役割を果たす。標的細胞に修復不可能な損傷を直接に与える放射性薬剤による治療(TRT)は、従来の治療法に反応しない難治性疾患の治療において益々注目されている。近年[177Lu]Lu-PSMA-617/[68Ga]Ga-PSMA-11などの承認により、TRTに資するセラノスティクスが癌治療の臨床現場で導入され、放射性薬剤開発と応用が新しい時代に入りつつある。セラノスティクスは、標的ベクターを用いることで放射性核種を病変部に正確に送達し、標的外への集積を回避できるため、腫瘍への診断と治療の効率とバイオセーフティを向上させることができる。現在まで多くの研究において、より広範な疾患の原因分子を標的とする新規放射性薬剤の開発に焦点が当てられ、高い腫瘍集積、長い滞留時間、そして臨床基準に適合した良好な薬物動態などの性能が実証されている。一方、診断用放射性薬剤は、患者の層別化と治療計画において極めて重要な役割を果たし、TRTにおける治療成績の向上につながっている。
講演では、FDA承認および臨床研究済みの薬剤を含む診断・治療用放射性薬剤及びこれらの開発を支える要素技術の開発現状と展望について紹介する。また、演者の研究グループがセラノスティクスを志向した放射性薬剤の開発実践も紹介する。
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