講師:下村 真弥 准教授(奈良女子大学)
日時:2025年11月18日(火)10:30~
場所:先端量子ビーム科学研究センター 三神峯ホール + zoom. によるハイブリッド開催
題目:高エネルギー原子核衝突によるクォーク・グルオンプラズマの研究
概要:
2000年より米国立ブルックヘブン研究所のRHIC加速器で開始された高エネルギー原子核衝突実験は、金の原子核同士を核子対当たり重心系エネルギー200GeVの高速まで加速して正面衝突をさせることで、クォークとグルオンがバラバラのスープ状になるクォーク・グルオンプラズマ(QGP)を生成し、その性質を調べることを目的に行われてきた。実験の結果、QGPの生成を示す複数の結果が報告されたが、その性質は当初予想されていたガスのようなほとんど相互作用しないものではなく、互いに強く相互作用する流体的振る舞いをする物質であることを示唆していた。さらに2006年以降は、スイス・欧州原子核研究機構のLHC加速器による、より高い重心系エネルギーでの実験も行われており、従来はQGPが生成されないと考えられていた小さな衝突系においても、特定の条件下で流体的集団運動などのQGP的特徴が観測されており、QGPの性質解明や相転移境界条件の探索が活発に進められている。
本講演では、QGP研究の概要を紹介するとともに、その興味深い成果と今後の展望について議論する。
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