サイクロトロンで製造された短寿命のポジトロン放出核種を使用し、陽電子断層撮影装置(PET)による核医学診断利用を目的に種々の放射性薬剤の合成を行っていますが、この診断用放射性薬剤の調製を作業者が被曝することなく行うため自動合成装置を使用します。
診断用注射薬として人に投与される放射性薬剤には、多くの品質基準を満たすことが要求されます。製造される薬剤は寿命が短いため、迅速にそのpH、純度、無菌性等が検定され、これらの結果が基準を満たしてはじめてPET検査に供されます。
以上のような工程を経て、がん診断用の11C-標識メチオニン、18F-FDG(18F-標識フルオロデオキシグルコース)、18F-FRP-170や、脳の高次機能検査やアルツハイマー病の診断用の種々の11C-標識薬剤(ドキセピン、ラクロプライド、ドネペジル、BF-227)、および15O-標識水が安全に合成・調製され、PETによる臨床研究に利用されています。
当センターでは上記に挙げたルーチンな薬剤製造の他に新しい放射性薬剤の開発も行っています。例えば18F-FDGは腫瘍検出に優れていますが、尿排泄されてしまうため腎臓、膀胱の腫瘍には不向きです。そのような欠点を補う目的で新たな腫瘍診断薬の開発や分子レベルでの動きを画像化する分子イメージングプローブの開発に取り組んでいます。候補化合物が選定された後、ポジトロン核種による合成反応条件(時間、温度、濃度等)や分離・精製条件を検討し、標識合成を行います。
新たに開発された放射性薬剤はPET薬剤としての有用性を動物を用いて評価します。ここで有用性が認められるとその薬剤の自動合成法を確立して、種々の安全審査を行い臨床薬剤として承認されます。
上記の内容についての詳しい情報は以下のウェブページの研究紹介をご覧ください。