糖尿病制御学寄附研究部門(寄附研究部門)

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研究概要

肥満・糖尿病の制御に関わる生体内の原理や法則を探究する研究室です。これまで肥満・2型糖尿病における食欲調節や摂食シグナルについて主に「セロトニン」を切り口にして研究を続けてきました。 米国UCSF時代の研究から肥満症に対する減量薬Lorcaserin(5-HT2C受容体刺激薬)が開発されました。

●摂食に関わる脳内セロトニンネットワーク
食事は肥満や糖尿病の制御の基盤であり、摂食は生命のプレバイタルとも言えます。肥満者の特徴として、慢性的な過食があります。 過食は食欲調節に関わる神経伝達系の異常に起因します。Nonogakiらはセロトニン5-HT2C受容体の伝達障害がレプチン非依存性過食を生じ、中年期肥満、2型糖尿病発症の原因となることを報告しました(Nat Med 1998)。 その後、5-HT2CRと食欲関連神経ペプチドの視床下部ネットワークについて解明してきました(IJMS 2022)。

●食事性蛋白質と摂食シグナル
近年、我々は食事性蛋白質に着目し、乳清タンパク質であるホエイプロテインの摂取が高脂肪食による肝由来FGF21の増加を抑制し、 インスリン抵抗性や耐糖能異常の発症を抑制すること(Sci Rep. 2020)や、ホエイプロテインが肝で胆汁酸合成、腸でセロトニン分泌、膵でインスリン分泌を抑制することを発見しました(Front Endocrinol. 2023、特許第7408517号 体内FGF15/19増加用組成物)。 一方、大豆由来タンパク質βコングリシニンは胆汁酸、セロトニン、インスリン分泌に対して増加作用を呈します。このように生体内で食事性蛋白質によって胆汁酸、セロトニン、インスリン分泌が連動することが明らかになりました。

●GLP-1-胆汁酸-トリプトファン代謝ネットワーク
更に、我々は摂食を介さずに胆汁酸、セロトニン、インスリン分泌が連動することを発見しました。血糖降下薬で減量薬でもあるGLP-1受容体作動薬Liraglutideは摂食を介さずに胆汁酸と大腸内でトリプトファン、セロトニン、キヌレニンを減少させ、インドール3酪酸を増加させます(IJMS, 2024)。 この際に血中セロトニンやインスリン濃度も低下し、血糖値や体重が摂食を介さずに減少します。このようにGLP-1受容体刺激によって胆汁酸、トリプトファン代謝、インスリン分泌が連動することが明らかになりました。 このネットワークが生体内でどのような役割をもつのか、更なる研究を進めていきます。

糖尿病制御学寄附研究部門のkey word

糖尿病、肥満、摂食、セロトニン、GLP-1、胆汁酸、トリプトファン代謝

スタッフ紹介

教授 野々垣 勝則

  • 専門:糖尿病・内分泌・代謝内科学、内科学、神経科学
  • TEL:022-795-5675
  • E-mail:katsu*tohoku.ac.jp(*を@に換えてください)
  • researchmap:https://researchmap.jp/nonogaki?lang=ja

助教 梶 豪雄